音声解析による、解約防止の未来

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2020-08-04

未曾有の新型コロナウイルス感染拡大による企業活動への影響は甚大なものであり、日本でも多くの企業が店舗の縮小や短縮営業など、人的コストの削減を図っています。中でもAI(人工知能)技術の企業への導入が以前にも増して注目されています。
当社で提供している「Robee」のチャットボットもAIを搭載していますが、今回はAIの中でも、コールセンター企業で注目されている「音声解析」の技術をピックアップし、「解約防止」という観点でwithコロナ・afterコロナの時代にこれからの業務にどのような可能性をもたらすのかをお伝えします。

音声認識とは

音声解析をする上で切り離せないのが「音声認識」です。音声認識とは、AIなどのコンピュータが人間の発した音声を文字化する技術のことです。
この技術は、統計的手法により実現するものが主流となっており、あらかじめ大量のデータから、音素に基づく「音響モデル」と、単語どうしの並び方に関する「言語モデル」を学習・構築することで、入力となる音声を文字として出力できます。

現在多くの企業が音声認識API(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)やSDK(ソフトウェア開発キット)を提供しています。様々なカスタマイズ機能を備えたものが一般的となっており、企業によって個性が出ています。以下がカスタマイズ機能の例となります。

  • ・固有名詞の認識
  • ・話者認識
  • ・感情分析
  • ・フィラー(「あのー」「えっと」など発話の間を埋める言葉)の自動削除
  • ・文タイプ(叙述/命令/疑問など)解析
  • ・要約
  • など

では、音声認識技術をベースとした音声解析はコールセンター企業でどのように活用されているのでしょうか?

コールセンターの音声解析と解約防止

在宅勤務への移行が進むコールセンター業界

音声解析についてお伝えする前に、はじめにコロナ禍でのコールセンターの動きと課題に触れておきます。今般のコロナ禍で、在宅勤務に舵を切るコールセンターが増えています。しかしながら、在宅勤務への切り替えは様々な課題を孕んでいます。情報漏洩のリスクがあるだけでなく、オペレーターのお客様対応の質とCS(顧客満足度)の低下をもたらしたり、責任者であるSV(スーパーバイザー)との速やかな連絡が困難となり、クレーム対応によるストレスも溜まりやすくなったりします。

そのような中でも、冒頭でも述べた通り当社では解約防止のチャットボットを開発しているので、解約防止の観点でCSの向上に向けた、音声解析による業務改善について考えます。

VOCは「データの宝庫」

コールセンターでのお客様とのやりとりの中には、お客様の要望や不満など、その商品や企業のマーケティング活動にとって大切な情報が眠っています。このお客様の声を「VOC(ヴォイス・オブ・カスタマー)」といいます。コールセンターではVOCを含む音声ログを蓄積していますので、まさにデータの宝庫となっているわけです。
にもかかわらず多くのコールセンターでは、日常の業務に追われ、この宝庫を十分にマーケティングに活用できておらず、宝の持ち腐れ状態となってしまっているのです。

今こそVOCを解約防止に活用する時

そもそもコールセンター業務は、お客様から電話がかかってくる「インバウンド」と、コールセンターからお客様に電話をかける「アウトバウンド」の2種類に大別されます。
そのため、既存のお客様からのアプローチとなるインバウンドの電話は、お客様が抱えている要望や不満を聞き出す絶好の機会と捉えることができます。
とりわけ解約希望者は、その商品に対して何かしらの不満を抱えているわけなので、その不満を適切に引き出すコミュニケーションができると様々なメリットがあります。コミュニケーションにより解約阻止の可能性を高め、そのお客様のLTV(顧客生涯価値)が上がることはもちろん、お客様の潜在ニーズを知ることで新規に契約をする人たちのLTVを引き上げることも可能です。
この適切なコミュニケーションの仕方を「見える化」できれば、コールセンターでの在宅勤務やリモート化が進んでもCSを下げることなく、むしろプラスの効果をもたらすことができるのです。

この「見える化」をするのがAIによる音声解析であり、コールセンターに蓄積された宝庫であるVOCや、オペレーターの音声といった解約阻止に関するビッグデータを活用することは企業にとって急務であるわけです。

音声解析の解約防止チャットボットへの応用

コールセンターの解約阻止データを活用した音声解析の技術は、チャットボットにも応用できます。以前の記事でもお伝えしましたが、コールセンターのベテランオペレーターの持つ技術をデジタル化し、均一化することを目指したのが当社の解約防止チャットボット開発の背景でした。

とはいっても、これはあくまでもコールセンターから着想を得たという話に過ぎず、実際にコールセンターの音声データからは解約防止チャットボットのシナリオ作成をしていませんでした。
そのような中でこの度当社では、コールセンター企業と事業提携をさせていただくことになったため、音声ビッグデータ解析によるコールセンターの業務効率化や、チャットボットのシナリオ作成にも取り組むことを予定しています。
よろしければこちらのプレスリリースもご覧ください。

チャットボットは人間の仕事を淘汰するものでなく「共存するもの」

チャットボットにコールセンターの技術を取り入れることで、「コールセンターの仕事はなくなり全て無人のチャットボットになるのではないか」という声が上がりそうですが、決してそうではありません。
やはりお客様にとってチャットボットは「機械」であり、人間にしかできないことはたくさんあります。例えば会話の中で相手が言葉通りの意味を伝えているのか、皮肉としてある表現を用いているのかを判別する能力などは、まだまだ人間に分があります。一方で、チャットボットは人間にできないことができます。それは時間を問わず常に同じ品質で応答することなどが挙げられるでしょう。

ただAIを用いた「業務改革」をするのではなく、このように両者にしかできないことは何かを考えた上で、それらをうまく組み合わせてチャットボットを設計し、共存していくことこそが、コロナの時代に価値のある業務改革となると考えています。

著者:石山 真也

データサイエンティスト。神戸市出身。
分析力を武器に日々音声データとチャットボットの会話データと向き合う。
焼肉、野球観戦、ポメラニアンを心から愛する。